鹿児島県の口永良部島の新岳で爆発的な噴火が起こり、130人余りの島民全員に島外への避難指示が出た。国や自治体は住民らの安全確保を第一に、迅速な避難の手助けや的確な情報発信に全力をあげてほしい。
同島では昨年8月に小規模な噴火が起こり、気象庁は警戒レベルを引き上げていた。今回の噴火は火砕流を伴う激しいものだったが、いまのところ大きな人的被害は出ていない。国は住民のほか、近くを航行する船や航空機にもきめ細かに警戒情報を出し、被害を最小限に抑えてもらいたい。
噴火が長引く恐れもある。2000年に噴火した伊豆諸島の三宅島では、島民が5年にわたり長期の島外避難を余儀なくされた。国や自治体はそうした事態も想定し、島民の避難先での生活支援策をいまから考えておくべきだ。
今回の噴火を、列島全体で火山活動が高まっていることの表れとみる専門家は多い。桜島や阿蘇山で噴火が続き、昨年9月の御嶽山(長野・岐阜)噴火では多くの登山者が犠牲になった。箱根山(神奈川)や蔵王山(山形・宮城)でも警戒水準が引き上げられた。
これらは4年前の東日本大震災との関連が疑われている。巨大地震の後には地殻のひずみが変わり、噴火しやすくなると考えられている。海外の巨大地震でも直後にたびたび噴火が起きてきた。
ただ噴火の予測は難しく、前兆とみられる火山性地震が続いても噴火には至らない場合もある。正確な情報を知り、日ごろから着実に備えておくことが肝要だ。
列島に110ある活火山のうち、噴火すると周辺への影響が大きい火山は47にのぼる。箱根山など37火山では噴石や降灰を予測した地図が公表されている。住民や観光客らはこれを参考にして行動すれば、被害を防げるはずだ。
一方で、自治体や専門家らを集めて防災対策を練る協議会が未整備の火山もある。国と自治体が連携して協議会の役割を強め、対策づくりを急ぐべきだ。